神様のきまぐれ
 


ある晴れた日。


事務所の片隅の
応接セットに座って、
志央が尋ねる。

「ヒナコ、契約切れたら
どうすんの?」

正直、まだ考えてない。

「今は明後日のライブの事で
頭が一杯だから、終わってから
考えます。」

そんな余裕は
自分にはない。
不器用で悲しくなる。

「ふーん。
なんか違う仕事すんの?」

「ええ。
一旦は、実家に帰るから、
具体的には、それから
考えるかな。」

仕事の片手間に
返事をした。

「どこなの?実家って?」

沖縄から、更に
船で離れた小島。
海と、山と、
自然があるだけ。

・・・志央の好きなネオンは、
間違いなく、今でも
ないはずだ。


そんな、何ともない
世間話をしながら、
空っぽの事務所で、
志央と二人、
留守番をしていた。


 

< 84 / 172 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop