神様のきまぐれ
「コウジさん?聞いてる?」

志央が目の前にしゃがみ込んで
俺の視界に入ってくる。

「えっ・・?」

「やだなあ。
ボーっとしてる。

せっかく、俺、
良いこといったのにな。」

志央が苦笑してる。

「すまん。考え事してた。」

「そんな感じだね。
またにするよ。それでね、
今度の新曲の事なんだけどさ。」

志央の言葉に顔をあげると、
全員そろってた。

どれだけ、
入り込んでたんだか・・・。

周りすら
見えてないじゃないか。

自嘲した。

スピ−カ−の向こうに、
事務所でパソコンを打つ
ヒナコの姿が見える。


沈んだ横顔・・・


キツかったかな。


キツかった・・よ、な・・・。


「日向、音くれ。」

「ああ。」

元田の声に、ハッとした。

また、トリップしていた
思考を切り替える。

新曲のギターのラインと
ベースライン
・・・壮絶に、あってない。

もちろん、
ドラムと歌が入ると見込んでも
俺だけ別物だよな。

「元、止めて。
なんか、思ったより
地味かも。
デモと大分イメージが
違うよな。」

「ああ、志央が
派手にしたいっつからな。
かなり出した。

まだ足りないくらい
らしいけどな。」


 
< 95 / 172 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop