キミノウソ ボクノウソ


僕は準備室を出て、本を忘れた森に足を向けていた。


むかつく。むかつく。むかつく。


実際、あの話しをされたのは初めてじゃない。


生活指導の河童にも学年主任のピーマンにも言われた。


『人の気持ちを考えろ』


悪いことじゃないのは分かってる。でも、大切なことでもないだろ?


だいたい、人は意思の疎通を図るために言葉が生まれた。それは、相手の気持ちが形にしないとわからないことを決定づけることだったはずた。


なのに、考えろっておかしいだろ。

無理なんだよ。人の気持ちを考えるなんて。



どうせ分かったところで僕に出来ることなんかなにもなかったんだから。



少し早足にガサガサといつもの道を歩いていく。


もう、二ヶ月もここへ来ているせいか、道を歩くのもおてのものだ。


下を向きながら歩みを進めると薄暗い裏山なのに、他の場所を圧倒する明るさが射してくる。


さっき二ヶ月来ていると言ったが、この天使が迎えにきそうなきれいな木漏れ日の景色は何度みても綺麗だと思う。


しかし、少しだけいつもと状況が違う。

でも、一回だけ見たことがある。



――…そうだ。
ちょうど一週間前、やっぱりベンチの上で寝てた女。


転入生―理崎がいた。



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