endorphin
 意外と子供っぽい仕草、熱心にピアノを弾く横顔、照れて赤く染まる頬。ごく普通の少女と変わらない笑顔ではしゃぐ美しいひと。
 椅子の背もたれに体重をかけ、それらを閉じ込めるように瞼を落とす。窓から降り注ぐ夏の日差しが皮膚を細やかに焦がしていく。
 俺の思い上がりでなければ、もしやこれは、彼女が俺に気を許してくれたということになるのか。
 誰かの「特別」である優越感、そしてその「誰か」が校内で知らぬ者のいない黒髪の美少女であること。新たな交友が広がっていく予感。期待に満ちた胸の高鳴りが心地よく、今朝の晴天に負けぬほどの爽やかな感動を俺はひとり噛みしめていた。
 重要な事項が頭からすっぽり抜け落ちている事実に、気付きもしないまま。

 
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