endorphin
 ぼんやりと思惑を巡らせていると、河本と菅が下から覗き込むように見上げてきた。
「オノくんさあ……今度こそ笹原さんとられちゃうかもよ」
 オノくん、などと中途半端な名前の切り方をするのは菅。
 何度否定しても議題に挙げられるのは俺と桂の関係について。
 河本と菅はやたらと俺たちの仲に口出しをしたがる。高校に入って親しくなった友人が、ある日唐突に学年一の美少女と仲良くなったものだから面白がっているのだ。
 俺は苦笑を浮かべながら今日もパターン化した台詞を口にする。
「とられるもなにも、俺たちただの友達だし」
「はいはい、出たよ小野田のオトモダチ宣言」
 河本がしらっとした目で俺を切り捨てる。もう何度目になるのか分からないやりとりに、俺は複雑な気持ちで溜め息を飲み込んだ。
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