endorphin
その日の放課後、俺と桂は飽きもせず、もはや俺たちの集合場所とも言える音楽室に来ていた。
桂は昼間のことについてなにも言わない。神崎先輩の「か」の字すら口にしない。何事もなかったかのようにいつもと変わらない振る舞いをする桂に、妙な苛立ちを覚えた。
ざわざわと心臓が喚いて、胸のあたりが落ち着かない。随分身勝手な感情だな、と自己嫌悪する。
俺は桂の「特別」なのだと思っていた。桂が特別親しくしているのは俺なのだと思っていた。けれども俺は、桂について一体どれほどのことを知っているというのだろう。
「さあ、今日はなにを弾こうかしら」
椅子に腰掛け桂は機嫌良くピアノに向かう。実はね、今日、神崎先輩に告白されたの。そんな言葉はもちろん発せられるはずもない。
西日で満たされた部屋のなかで、桂の白い肌が浮いている。
桂は昼間のことについてなにも言わない。神崎先輩の「か」の字すら口にしない。何事もなかったかのようにいつもと変わらない振る舞いをする桂に、妙な苛立ちを覚えた。
ざわざわと心臓が喚いて、胸のあたりが落ち着かない。随分身勝手な感情だな、と自己嫌悪する。
俺は桂の「特別」なのだと思っていた。桂が特別親しくしているのは俺なのだと思っていた。けれども俺は、桂について一体どれほどのことを知っているというのだろう。
「さあ、今日はなにを弾こうかしら」
椅子に腰掛け桂は機嫌良くピアノに向かう。実はね、今日、神崎先輩に告白されたの。そんな言葉はもちろん発せられるはずもない。
西日で満たされた部屋のなかで、桂の白い肌が浮いている。