学園戦隊 ドキドキ☆ビューティー
まずいことに、3組の教室の授業は、チャイム前に授業を終わらす柚原だ。

――間に合いますようにっ!

香流の願いも虚しく、ちょうど3組を通り過ぎたあたりで、柚原が出てきてしまった。

目をまん丸にして立ち尽くす柚原の脇を会釈してすり抜け、香流は保健室にチャイム前ぎりぎりに飛び込んだ。

「ゆきのん、置いてくなんてヒドイよぉ!」

香流がそう言いながら保健室に飛び込むと、すっかり元にもどった雪野が、普通の顔で

「かおるん、遅かったね。変身はくノ一のように素早くね!」

と、脱いだ衣装を畳みながら言う。

すっかり脱力した香流だったが、人が来る前に、とりあえず身につけていた物を猛ダッシュで脱いだ。

雪野が持っていた紙袋に、乱暴に全部押し込めると、

「教室、戻る……?」

と一応聞いてみる。

クラスメイトには、どうひいき目に考えてみても、二人の正体はバレバレだ。

教室に戻ったら何を言われるか判らない。

でも、雪野にその発想はなかった。

「当たり前じゃない。授業サボるの?」

しれっと言う。

「さて、戻りますか! 次は沖先生の数学じゃん! 寝てても楽勝!」

そう言うと、何事もなかったように教室に向かって歩き出した。

見えない引き綱を引っ張られるように、香流もその後に続いた。


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