学園戦隊 ドキドキ☆ビューティー
楓の視線に気付き、

「あ、これ?」

事も無げに輪廻が言う。

「今度のマン研の部誌に載せる作品だよ」

書いていたモノを楓に見せる。

そこには、ちょうど、少年が刺されて悲鳴をあげ、血しぶきが舞っている絵が描かれていた。

「この血しぶきをねぇ、あたし、今まで適当に描いてたんだよね。こう、派手に見えるようにさ。でも、マン研の部長やってる、るいるい先輩……あ、坂田るい先輩ね。その先輩に、言われたのよ。
『血しぶきは、それを見ただけで、刺した凶器や、力加減、方向まで判るものなの。それを考えてちゃんと描かなきゃ、リアリティのある絵は描けないよ!』
って。
さすがだよねぇ。
んで、このシーンを必死に手直ししようとしているとこだったんだぁ」

まくしたてるように輪廻が言うのを、その勢いに気圧されて、楓は黙って聞いていた。

血しぶきの美学は、当然、楓には理解できない。

しかし、目を輝かせて話す輪廻の勢いを止めることは出来なかった。

色白で、少し茶色い長め目の髪をゆるく巻き髪にしている。
黙っていれば大人しそうな可愛い子、という印象なのだが、その趣味が普通とはかけ離れているらしい。

楓は当然知らなかったが、輪廻と会話していると、必ずスプラッタな話が紛れ込んで来るのだ。

運の悪いことに、血しぶきについて語りたいと思っていたところに楓が来合わせたので、彼がその話の餌食になる羽目に陥ったのだ。

「普通やられるのは女の子なんだけど、たまには趣向を変えて、美少年でいこうと思ってさぁ、それでこの子なんだぁ」

輪廻の目は、とても澄んで輝いていた。
一点の曇りもなく、純粋に。

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