僕らは、何も知らない
 「腹減ったー」
「一日一回はそれ言うよな」
「だって男の子だもん」
「はいはい」
「あ、今日俺購買」
「じゃあ待っとくわ──あーついでにレモンウォーターよろしく。金だ」

投げて百円玉を渡すと、昴は「パシられたー」と言いながら去っていった。

何故か廊下にあるベンチに座ると、同じ一年らしい女子二人が寄ってきた。

 「ねえねえ、神崎くんって彼女いるの?」
「……いや、いないけど」
なんだこの人。
同じクラスだったっけか?
「え〜いないの〜意外ーっ」
きゃっきゃしだす二人。
本当になんなんだ。

「神崎くん頭いいし運動できるし、格好いいのに……ねえ?」
「そんな大したことは……」

俺を口説く気か?!
もう中学時代の間違いを繰り返す気は……!

「あたしと付き合っちゃおうよー」
「い、いや、俺は」

好きな人が居るんで……

そう言おうとして、止まった。
自分に好きな人なんか、いるのか?
いないだろ。
あんまり嘘はつきたくないな。

 「今、彼女募集中じゃないんだよ」
「そおなんだ? 残念〜」
「はは……」

よしセーフだ!
大丈夫さ多分。
やばかった危なかった。

「じゃあねー」と教室の方向へ歩き出す女子二人。

 「……どうした変な顔して」
購買から戻った昴は、俺を見るなり不思議そうに訊いてきた。
「さあ……逆ナン」


    ◆  ◆  ◆



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