僕らは、何も知らない
 「……でさあ、俺の姉ちゃんがその痴漢をスカイアッパーでぼっこぼこにしたんだよ」
「お姉さん強いのねー」
「男の俺でもやられる」
「しっかりしろーぃ」
「うわ、白因幡先生のモノマネ? 似てる」

班員で恒例のお昼の雑談。
今日は昴の姉ちゃんが痴漢を撃退した話だった。

 「皆は兄弟居ねえの?」
「俺一人っ子」
「私は兄が一人いるわ」
答えたのは空知昴くんが恋する唯谷。

「え、そうなんだ……イケメン?」
何訊いてやがる昴の野郎!

「ええと……、ヒゲ……メン?」

…………。
意外にそういう系なのか唯谷……恐ろしい子……!

「年離れてるの?」
「兄が二十二歳なので、六歳差ですねー」

段々二人の世界になってきたので、視線を二人から外した。

「雛森は?」
「んっ?」

話を振ると、笑顔で向いてくれた。

「兄弟いる?」
「あ、うん。中一の妹がいるよ」
「へー、雛森って妹いるんだ……逆に雛森が妹っぽい」
「ひ、酷いよー。でも雨癒ちゃん最近は何かつんつんしてるけど……」

「『ういちゃん』?」
「あ、妹の名前なの。雨で癒すって書いて雨癒。バスケやってて元気な子なんだよー」



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