3人の き も ち


この、ブアイソ感は――



「映樹か。」

「きゃ あぁっ、それはっ!」


ひどく慌てて驚いた声に振り返ると、真っ赤な顔の高原が、お盆に飲み物の入ったコップを乗せて立っていた。


「これ、最近…じゃ、ないよな。背が今より低いもん。」

「…中学の入学式の日にね、描かせてって、1時間くらいガマンしてもらったの。」

「ヘェ。」


あの映樹が、ね。



「人を描いたのは、それが初めて。あ、あんまり見ないで…。」

ヘタで恥ずかしいから。
と言う高原は、赤い顔のまま座ってローテーブルにコップを置く。

照れる彼女と絵の中の無愛想な映樹。


なんだか微笑ましい気分で、その絵を指し示しながら彼女の側に近づいて。


「俺も欲しい。こんな感じのがイイ。」

俺を描いて、そう言う。


すると、びっくりした顔の高原が俺を見上げてきた。



彼女の真っ赤な頬。
瞳が潤んでいる表情にハッとして、思わず黙り込む。

そのまま見詰め合うこと数分。
お互いに目線がはずせない。


吸い寄せられる感覚。

ぎこちなく、それでも自然と顔を近付ける。



その日、初めてキスをした。



< 69 / 152 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop