3人の き も ち
この、ブアイソ感は――
「映樹か。」
「きゃ あぁっ、それはっ!」
ひどく慌てて驚いた声に振り返ると、真っ赤な顔の高原が、お盆に飲み物の入ったコップを乗せて立っていた。
「これ、最近…じゃ、ないよな。背が今より低いもん。」
「…中学の入学式の日にね、描かせてって、1時間くらいガマンしてもらったの。」
「ヘェ。」
あの映樹が、ね。
「人を描いたのは、それが初めて。あ、あんまり見ないで…。」
ヘタで恥ずかしいから。
と言う高原は、赤い顔のまま座ってローテーブルにコップを置く。
照れる彼女と絵の中の無愛想な映樹。
なんだか微笑ましい気分で、その絵を指し示しながら彼女の側に近づいて。
「俺も欲しい。こんな感じのがイイ。」
俺を描いて、そう言う。
すると、びっくりした顔の高原が俺を見上げてきた。
彼女の真っ赤な頬。
瞳が潤んでいる表情にハッとして、思わず黙り込む。
そのまま見詰め合うこと数分。
お互いに目線がはずせない。
吸い寄せられる感覚。
ぎこちなく、それでも自然と顔を近付ける。
その日、初めてキスをした。