3人の き も ち
まさか、恋愛に鈍い早苗が、もっと鈍感なあの伸に、
…伸に、惚れるなんて…。
初めの頃には映樹の心の中なんて、嘘であってほしい。そんな考えばかりで。
まさに、弥生や伸などに揶揄される
《 娘に悪い虫が付かないか心配する男親 》
そのもので。
自分と彼女の距離や関係を変える、ことすら思いも浮かばない。
だから、早苗から「伸が好き」だ、と聞かされた時。
心が静かに冷え、凍っていくのをどこか遠くから眺めている錯覚を覚え、張り裂けんばかりの痛みに、ひどく動揺した。
なぜ と どうして
そればかりが頭の中をしめていた。