たからもの。
前から、見覚えのある女が近づいてきた。
香宮っていう奴だ。
「先生。そんな大事になったワケじゃないんですから、離してあげてくれませんか?」
「しかしな、香宮。
問題のある生徒には厳しくしないとな」
香宮はセンコーの目を睨むように見て、にっと笑って言った。
「先生、知ってます?
先生って、凄く評判が悪いんです。先生は凄く厳しいでしょ?
だから生徒から嫌われちゃってるんです。
保護者の間でも、あの先生は厳しすぎるって言われてるらしいですよ。
このままだと…
学校、辞めないといけなくなっちゃうかもしれないですよねー。
だから、いいでしょ?
セーンセ」
センコーの顔が青ざめていく。
センコーは、慌てた様子を隠すように言った。
「ま、まぁ、いいだろう。しっかり話をして、もう二度とこういうことがないようにしなさい」
センコーは俺を離して、焦りながら歩いていった。