【短編】ギター少女とヘビースモーカー


9月も中旬

「僕昨日寝てないんですよー」

またか


運動会後のやる気のない生徒達に、先生はいつもの無駄話

「何してたんですか?」

そんな一人のクラスメイトの質問の答えは、もう聞いてすらいなかった


運動会が終わったら、さすがに本格的に合わせの練習しないとやばい


休憩をやめて、音を合わせた

先生もみんなも、前より正確になってた

それぞれ、いっぱい家で、練習してきたんだと思う

まだ半分までだけど、気掛かりなく思いっきり歌うことができた


「あーちょっとごめん

も一回休憩させて」

そう言って先生は、ギターを外した


「どうしたんですかー?」

ユリが先生に向かって、声を投げた


「…ちょっとね

オッサンは体力がなくてスマンね」

また……言わない

こうやって、大事なことはいつも、言わないんだ

(大事なことかどうかは、分からないけど)


こうやって、はぐらかされる

そしてこっちは、気になるだけ


そのまま、姿が見えなくなった

教室を出ていく背中に、見覚えがあった

遠い、残像


そーだ 授業の後

いつもすぐ教室から出ていく、あの後ろ姿


それに、こーやってみんなで練習してるときも

たまに出ていく いなくなる

終わったら、すぐ消える


あっという間にいなくなって、部屋は4人の生徒だけ

みんなで、さっきの演奏のことを褒め合った


友達とだけの空気

まるで、さっきまでそこに誰もいなかったみたいに


また だ

あの人と私との、差



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