【短編】ギター少女とヘビースモーカー
「先生、昨日寝てないって、何してたんですか?」
答えてくれなくても、別にいーやって思った
風に吹かれて髪が乱れた
髪を直しながらボソッと言った言葉に、返事はなかなか返ってこなかった
そっか まいっか…
「昨日はー」
突然紡ぎだされた言葉に、髪をいじる手が止まった
「問題解いてたら気がついたら朝でー あはは」
問題…って、数学の?だよね
「え、もしかして、いつも寝てない時ってそんな感じなんですか?」
「うーんまあー」
ウッソみたい……
「あ、てか、今週の週末課題見た?
あれ、絶対やりなよ?超ーすげーから」
先生の顔が突然パアッと明るくなった
この顔、見たことある
「すごいって…?」
「えー言わない!絶対自分で見た方がいい! あーでも…言いてぇ~~」
この顔、あれだ
「あのさ、貝沢先生の解答が、すっげーの バシッと!かーっこいーよー」
私が、初めて質問をしに行ったとき
こんな顔をされたら、私は、ラインの内側にいるって、錯覚を起こす
いや、もしかしたら錯覚じゃないのかもしれない