【短編】ギター少女とヘビースモーカー
車が通り過ぎる音 が、ひっきりなしに聞こえる
風は冷たい
でも空は 今日もきれい
「はよーございまーす」
「おーっす 全然お早くねーぞー」
今日も先生は、一人でタバコを吸ってた
「今日は9時に起きたんですけど、敢えて昼登校してみました」
もう昼間にチャリをこいでも、暑くない季節になっていた
「朝は寒いからなー」
うん 最近、朝は上着を着ないと寒い
今日も空は青かったけど、雲は高いうす雲に変わってた
また先生は、私なんていないみたいに、向こうをむいて煙を飛ばす
「先生、それそんなにおいしーんですか?」
あの日と同じことを聞いてみる
「べつにー」
あの日と同じ答えが返ってくる
「先生」
その横顔に目をやる
「それ、ちょっとください」
先生はこっちを振り向いて、口からタバコを離した
私の目をジッと睨んだ後、人差し指と中指で挟んでるタバコの向きを反対にした
そして、また私の目をチラッと見た
チャリを傾けて、視線を落とした
垂れる髪がうざったくて、右手で掻き分ける
タバコを挟んだその手は、少しも震えていない
それがまた、憎らしい
眉をひそめた私を見て、先生は笑った
「お味はいかが?」
「……まっず」
fin.