ニノウデ
雨宮 渚
僕は指輪をそっと机の下に置いた。
自分の部屋に戻って、しばらくすると姉ちゃんが2階にあがってくる足音がする。
タンタンタン――ガチャ…バタン
「あっ!あった!!」
隣の部屋との薄い壁を飛び越えて姉ちゃんの喜ぶ声が頭に響いた
――そんなにうれしいかよ
捨ててしまいたかったが、悲しむ顔が見たくないから戻したのに、少し後悔。
その日の夕飯、姉ちゃんはやけにテンションが高くて僕のテンションは底についた。
指を見ると指輪の跡がうっすら残っている。家族には知られたくないのか、おれに見せたくないのか。
「姉ちゃんなんかいいことあったの?」
白々しく聞いてみた。
「なんでもないよ!そんなことよりご飯食べたら薬飲まなきゃだめだよ!」
姉ちゃんは食べ終わると、弾むように階段をのぼっていった。…鼻歌まじりで。
やっぱりあんなの捨てればよかった。