ニノウデ
田中は顔を真っ赤にして、姉ちゃんの髪を引っ張り続けた。
姉ちゃんが泣きながら田中の自転車を蹴飛ばした。
今度は田中が泣き出した。
「何すんだよ!買ってもらったばっかりなんだぞ!」
「早く帰れバカ田中!」
「お前らなんてうその姉弟のくせに気持ちわりーんだよ!」
――それは言ってはいけない言葉
「……そんなことないもん、私はけんじのお姉ちゃんだし、けんじは私の大事な弟だもん!」
僕も姉ちゃんもこの頃には本当の家族じゃないって知ってたけど、姉ちゃんは何度も何度も叫んだ。
「……なぎさ、なぎさ姉ちゃんは僕の大事な……大好きな姉ちゃんだ!」
僕も泣きながら田中に叫んだ。
『なぎさ』なんて呼んだのはそのときの一回だけ。
『姉ちゃん』って呼ばないと家族から自分が外れてる気がして怖かった
思い出に浸りすぎて、学校に遅刻した。
やばい、今日は遅刻検査があったんだ……
今日の1時間目は生徒指導室に決定