【短編】空より広く、海より深く
「どうしたのー??
いつも元気よくできるのに」

屈んで促すと
もじもじしながら答える。

「かたせいつき、3さい」

あいかわらず
指で3を作るのが下手だ。

2.5歳に見える。

「もうすぐお誕生日だもんね」

「あのね、はっぱのひで、4さい」

みのりに言われて
今度は勢いよく指で4を作った。

「はっぱ?」

「8月8日が誕生日なの」

みのりが添えていた
手を離すと
樹は広場に向けて走り出す。

「階段のほうには行かないでね!」

聞こえているのかいないのか
自分の背丈くらいの草と
格闘している。


ため息をついて
門倉を見る。
タバコは手にしていたが
吸ってはいなかった。

樹に遠慮したのかもしれない。






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