【短編】空より広く、海より深く
何かを思うよりも先に
みのりは立ち上がっていた。


車のエンジンが止まる。

門倉の頭が
垣根と車の向こうに見えた。


顔を上げた門倉と目が合う。

一瞬びっくりしたようだったが
笑って玄関の方へ歩き出す。


心臓の音が
うるさいくらいに
頭まで響いてくる。

みのりも足早に
玄関の方へ歩いた。


門の前に門倉は立っていた。

「まだ帰ってなかったんだな」

「…」

言葉に詰まった。

昨日の出会いは偶然だったが
門倉の方から
自分を訪ねてくるとは
思わなかった。



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