【短編】空より広く、海より深く
門倉と約束した日は
いつもより念入りにメイクをした。


好みの服装
好みの髪型
好みのしぐさ

意識すればするほど空回りした。

それでも
意識せずにはいられなかった。


言葉にできないくらい
大好きで
振り向いてほしかった。


いつも門倉の背中を見送る。
門倉は振り返らない。

それが淋しくて苦しかった。


一度でいいからこっちを見て。


自分が相手を思うのと同じくらい
相手に自分のことを思ってほしい。

わがままな思いだったが
昔からその気持ちは
変わることがなかった。


みのりが好きだ、と
ただその一言が聞きたくて。



< 48 / 57 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop