【短編】空より広く、海より深く

「こら、樹
窓がベタベタになっちゃう」

窓に張り付いて
外を眺めている樹を
みのりは抱きかかえた。

「気にしなくていいよ」

門倉は運転しながら言う。

いつもより車高の高い車だから
外の景色がよく見えるのだ。


よく見えるね
すごいねと
樹は何度もつぶやく。

車が海沿いに出ると
海面が太陽の光を
キラキラと反射している。
澄んだ青空を映した
海原が広がる。

樹はさらにはしゃいだ。

「今度行ってみる?
樹はまだ海に
行ったことないもんね」

「海!海!」

「…帰りに寄るか?」


門倉が少し後ろを見ながら
聞いてくる。

「いいの?」

小さく笑いながらうなずく。

「ご飯だけど
行きたい店ある?」

「わからないから任せるよ。
オススメある?」

「オススメというか…
俺が内装やった店だけど
みたい?」

「仕事で?
すごい!行きたい」



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