無気力キューピット
「んっ・・・」
うっすらと目を開けると、そこには
少しにじんだ真っ青な空が一面に
広がっていた涼しい風がそっと頬を
なでていく。
「ここ・・・は」
上半身を起こすと頭がズキズキと痛んだ。
そうだ・・・。
私は車にひかれたんだっけ。
ふいにあの時の光景がよぎった。
眩しい光。鳴り響くクラクションと、
ブレーキの音。
なぜだろうか。自分でも怖いくらい
冷静だった。ただ、頭が血がのぼった
時のようにぼーっとした。
「やっと起きたか」
「えっ・・・」
後ろから低めでおだやかな心地よい
声が聞えた。振り向くと、そこには
男がだるそうに立っていた。
背は高くひょろりとしていて、
少しクセのある黒髪と、とろんとした目
が印象的だった。
「まったく。なにやってんだか」
「あっ・・・あの・・・」
ここはどこ?あなたは誰?
私はどうなったの?
聞きたいことが次々と浮かんだが、
頭が痛むせいもあってうまく
まとまらなかった。
「なにか?」
「あっあの・・・あなたは誰ですか?
ここは・・・」
「リョウ。まだ地上だけど?」
彼はだるそうにストンと腰を下ろした。
まだ地上とはどういう意味だろう?


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