無気力キューピット

「あの、私は・・・っ」
「残念ながらあんたはさっき死んだよ。
トラックにつっこんじゃ、当たり前の
結果だけど」
彼は表情ひとつ変えない。
よく意味が理解できなかった。
死んだ?私が?
「だからね、あんたは死んだの。
わかる?」
ぽかんとしている私に指を指して、
彼はゆっくりと言った。
「・・・死んだ?そっか・・・私は
死んだのか。もう存在しないのか・・・」
そうか。私はあのとき死んだんだ。
全て終わっちゃった。
後悔が私の心に渦巻いたが、涙は全く
でなかった。少しだけ楽になったような
気がしたからだった。
「そうゆうこと」
夢だとは少しも思わなかった。
夢にしては空が眩しすぎた。
「じゃ、行くか」
「えっ・・・?」
リョウさんは私をひょいっと
肩に背負った。
「えっ!?ちょっと・・・っ」
「うるさい。静かにしてろ」
そこからはあまり覚えていない。
ただ、少しの間ふわりと宙に
浮いていた気がする。
あの感覚はきっと忘れられないと思う。
気持ちがいいような、安心するような、
なんともいえない感覚。

今日は私の命日。
< 3 / 9 >

この作品をシェア

pagetop