無気力キューピット

「あのーリョウさん?いったい
どこへ行くんですか。本部ってなんで
すか?取り消されるって・・・」
すぐ前を歩くリョウさんは、こんなに
近くにいるのに遠く思えた。
無言のまま、ただ歩き続けた。
ふいに周囲を見回すと、一つの街の
ようになっていて、それはフランス
かどこかの古い町並みを思わせた。
そして多くの人が行きかっていた。
そもそもここはどこなのだろう。
少なくとも、私のいた場所ではない。
天国、なのだろうか。
「お姉ちゃん?ここは『エデン』だよ」
「えっ・・・」
急にスカートの裾をつかまれて足を
止めた。見下ろすと、そこには小さな
金髪の男の子がニコッと微笑み私を
見上げていた。
「エデン・・・?」
「うん、エデン」
エデンとは、あのエデンの園のこと
だろうか?
「・・・僕、だあれ?」
「僕、天使」
「・・・」
天使・・・?もう、めちゃくちゃだ。
でも、もはや納得しない訳には
いかなかった。
そうか。リョウさんもさっき会った
ユウキさんも天使なのか。
「なに油売ってんの・・・」
人ごみを掻き分け、リョウさんは私の
襟をグッと乱暴に引き寄せた。
「あっリョウさん・・・」
「ユアか・・・なんでこんなとこに
いるんだ?あのメガネは?」
リョウさんは私を無視して天使の男の子
をにらんだ。
「いーのいーの!それよりさ、この
お姉ちゃんしんじんさんでしょ?
なにも知らないみたいだよ。なんで
教えてあげないの?」
「お前には関係ないだろ。急いでんだ。
こいつはあと30分しかもたない
んだよ」
もたない?私はもう死んでいるのに?
「そうなの!?たいへんだね!
お姉ちゃん、頑張ってね」
ユアというその男の子は、大きく手を
振った。私は疑問を抱いたまま、胸の
前で小さく手を振った。
そしてまた人ごみの中に引き戻された。
「リョウさん、30分しかもたないって
どうゆう意味ですか?」
「・・・お前が完全に消滅するまでの
タイムリミットは30分」
「えっ?」







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