無気力キューピット

完全に消滅?
「どういう・・・意味ですか?」
リョウさんは、説明する気になって
くれたのか、いいか?とだるそうに
ゆっくりと口を開いた。
「ここはエデン。人間たちの言う天国
みたいなもんだ。そしてお前はまだ完全
に消滅した訳じゃない。魂はかろうじで
残っている。消滅しないための唯一の
方法は、本部に行って『名』を
授かること。それだけだ」
「『名』?」
「行けば、わかる」
リョウさんはそう言うとまた口を
閉ざし、すたすたと前に進んだ。
『消滅』と聞いてもあまり実感は
わかなかった。だってもうすでに私は
死んでいるわけだし、名を授かったとし
ても意味なんてないのではないか。

できれば、生きたかった・・・。
その言葉が頭で何度も繰り返された。
だがそれはすぐに現実に打ち消される
のであった。

そういえば、『向こう』の私は
どうしているだろう。
死んでからけっこう時間がたっていると
思うから、きっと今頃家族や親戚に
泣き付かれているか、ひんやりとした
台の上に乗せられて真っ暗な部屋に
安置されているだろうか・・・。
ごめんね、みんな・・・。
家族の顔を思い浮かべてみるものの、
今の私にはどうすることもできない。
ただ今はリョウさんの背中を追いかける
ことしかできないのだ。







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