無気力キューピット
「いたっ。あぁいや、痛くない・・・」
急に立ち止まったリョウさんの背中に
ぶつかった。いたくないのに、痛いと
言ってしまった。
「ついたぞ」
見上げると、そこには大きな門が
立ちはだかっていた。
赤や金であざやかに塗られた光沢のある
その門は、きらきらと輝いていた。
「ここ、ですか・・・」
「あぁ」
リョウさんが扉に描かれた銀の十字架に
手をかざすと、その門はゴゴゴッと少し
地面を揺らしてゆっくりと開いた。
そこには真っ赤なじゅうたんがしかれて
いて、いくつかの階段が見えた。
「ようこそ、エデン本部に。今日は
どのようなご用件で」
扉の横に立っている、スーツがよく
似合う女の人がきっちりと頭を下げた。
「名を授かりに来た。大天使様のとこ
に通して」
「はい、大天使様の所ですね。
かしこまりました。前の階段にお進み
ください」
私たちは、言われたとおりに階段を
のぼりはじめた。
これで、一安心なのかな。と思った
のは間違いだということを、
このときの私はまだ知らなかった。