馬鹿が飛んだ日


2/7

 君は僕を馬鹿、と呼びました
その呼び方が、僕は好きでした
だから君に馬鹿、と呼ばれると
僕は思わず笑っちゃいました
そしたら君は、また「ばーか」と
言いました
以来ずっと、僕は馬鹿です


 ベンチの端にはそう書いてあった。



3/7


 君が僕の学校の卒業生だということは
会ってすぐにわかりました
ひとつ上の番長な君は
学校じゃとても有名だったから
今思えば、君はずっと前から
僕の太陽でした

 シーソーには、そうガタガタに書いてあった。




4/7

 君はあれから
僕の前に現れる
ようになりました
そして僕を
馬鹿と呼んでは
いろいろな話しを
してくれました
僕もいろんな
話しをしました

そして君は
僕が自殺志願者だ
ということを
知りました

ジャングルジムの棒には、切れ切れの文でそう書いてあった。




5/7

 君と出会ってから僕は
空が遠いことを知りました
いつもブランコをこげば届くと
思っていた空は
本当はすごく遠かったのです
それから、君と話しをしていることで
今が夏だということにも気付きました
どうりで、蝉時雨が響きます

 滑り台の階段には、読みづらいけどそう書かれていた。



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