馬鹿が飛んだ日
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君は僕を馬鹿、と呼びました
その呼び方が、僕は好きでした
だから君に馬鹿、と呼ばれると
僕は思わず笑っちゃいました
そしたら君は、また「ばーか」と
言いました
以来ずっと、僕は馬鹿です
ベンチの端にはそう書いてあった。
3/7
君が僕の学校の卒業生だということは
会ってすぐにわかりました
ひとつ上の番長な君は
学校じゃとても有名だったから
今思えば、君はずっと前から
僕の太陽でした
シーソーには、そうガタガタに書いてあった。
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君はあれから
僕の前に現れる
ようになりました
そして僕を
馬鹿と呼んでは
いろいろな話しを
してくれました
僕もいろんな
話しをしました
そして君は
僕が自殺志願者だ
ということを
知りました
ジャングルジムの棒には、切れ切れの文でそう書いてあった。
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君と出会ってから僕は
空が遠いことを知りました
いつもブランコをこげば届くと
思っていた空は
本当はすごく遠かったのです
それから、君と話しをしていることで
今が夏だということにも気付きました
どうりで、蝉時雨が響きます
滑り台の階段には、読みづらいけどそう書かれていた。