パラダイス ビリーバー

1.私の好きな先生

カーテンを開けると、夏の初めのに匂いがした。
明るい陽射しと、涼しい風に、私はそっとため息をつく。
今日も世界は美しい。外からは鬱蒼として見えるこの庭も、内側から見れば、木々や色とりどりの花が外界の汚れから護ってくれているかのような、香り豊かでみずみずしい緑の楽園だ。
ほっとする、ということを、安堵する、というのだと、このあいだ先生に聞いたのを思い出して、私は心の中で、さっきのは、「安堵のため息」と改めて確認した。
そうすると、呼吸は楽になり、私は思う存分、その緑色の空気を吸い込むことが出来る。すがすがしい。
すっとする目薬をさしたように、視界が透明になるのを感じた。