パラダイス ビリーバー
「先生、先生?」
キシキシ音の鳴る階段を昇って、二階の突き当たりのドアをノックする。
「朝だよ、先生。わんこ達もゴハン待ってるから、起きて」
「んー……鳥は?」
「あっ!まだ!でも、もうトースト仕掛けちゃった、起きて!」
慌てて階段を駆け降りて、コーヒーの大きな空き缶を抱えて、サンダルをつっかけると、庭の給餌台に走った。
ピチピチ鳴いていた声が瞬間静まって、私が缶から一握りの餌を乗せて、そっと立ち去るのを待っている。
私がそこを背に離れたかどうか、というタイミングで、せっかちな羽音が聞こえた。
こっそり振り向くと、給餌台は大賑わいだ。
先生の庭に来る小鳥は、みんな一様にふくふくしていて可愛らしい。後で水場の掃除をしておこう。
キッチンへ戻ると、チン!と音を立ててトーストが焼き上がった。
慌てて冷蔵庫からバターとマーマレードを出していると、それを見計らったかのように、キャミソールにガウンを羽織っただけの先生が二階から降りて来て、くしゅくしゅと腰まで流れる栗色の髪を、無造作にまとめながら、欠伸交じりに
「おはよう、美好」
と、笑った。