咲いても、枯れても1~サクラ色~
鋭銀の刃
『秀介っ!!!!』
『兄さまああ!!』
どこからか、わからないけれど、一人の男の子が、拓に飛び付いてきた。
拓は、その男の子のいる位置を勘づいていたみたい。
ぎゅっと抱きしめる。
……私の肩を離して。
『兄さま!遅かったですよ!!どちらへ、出かけてらしたんですか!!!!』
『ちょっと、桜を見に…』
『また、ですか?この家にも、桜はたくさんあるのに!!』
会話を聞いていて、確かに、と思った。
拓の家には、たくさんの種類の桜がある。
なのに、なんで?
わざわざ、あの桜を見に行くの?
『あの桜は格別なんだよ。どこよりも、素晴らしい』
『そう言いながらも、俺をあの場所に連れて行ってくれたことは、あんまりないくせに…』
『そうか?じゃあ、今度一緒に行こうか』
『はい!!約束、ですよ?』
『わかった、わかった』
やっぱり楽しそうに笑う拓を見て、あの男の子は“秀介くん”だと、改めて理解する。