咲いても、枯れても1~サクラ色~
大きな隔たり
まだ、暗闇だった。
目を開いて、手探りで彼を探しても、どこにもいない。
『拓?』
その問いかけに、返事は返って来ない。
妙に、胸騒ぎがする。
一人、ということが怖い。
ガラスの向こうの桜も、藍色に染まっている。
今日は、月が隠れているわ。
勝手に部屋を出るわけにもいかず、ガラス戸を開ける。
少し冷たい風が、流れ込んでくる。
私は、貴方の桜に成れたのかしら?
そう思って、唇に触れる。
まだ、微かに拓の温もりが残っている。
髪も、肌も、瞳も、心も、私の全ては、拓のものになった。
この上なく、幸せだった。
拓が傍に居ない、触れられない距離なだけで、不安が胸を巣食う。
再びベッドに座る。
まだ、熱が残るベッドに。