咲いても、枯れても1~サクラ色~



『だ、誰なの?』




返事は無い。



ただ、しゃがみ込む私に手を差し伸べる。





『白純美』




その柔らかい声に、涙が流れて行く。



知ってる。




この声を、私は知ってる。






手を取ろうとした時、後ろからまた、声がした。




『白純美』




これも、知ってる。




『白純美』




これも。




その後も、声が続いた。





“白純美”、と呼ぶ声が。






どうしたら良いのか分からなくなって、目の前の手を取るのを躊躇する。





『好きだよ、白純美』





耳元で鳴り響く、声。


誰のか分からない。





誰?ねえ、拓?



嫌、なんだか怖い。




助けて、



誰か助けて─────!!!!!!





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