咲いても、枯れても1~サクラ色~
すたすたと前を歩く恵の背に向かって叫ぶ。
『えっ、だから、ないって!!アイツとは!』
『白純美もいつまでも夢見てないでさ、こういう出逢いを大事にするべきだと思うよ~』
『恵はすぐ夢、夢って…』
『だってそうでしょ?実際に白純美の描く“王子様”なんていないのよ?』
『────いたもんっ』
私は思わず立ち止まって叫んだ。
『いたもん…理想の、人』
王子さま、そんなのじゃない。
私はそんな人いらない。
けど、頭の中に描いていた理想の人が、昨日現実に現れた。
思い出す度に、熱い。
体が、心が、全てが。
『…白純美?』
『昨日、会った』
『え…』
『理想の、人だった』
それ以上何も言わなかった。
言えなかった。
何も知らないから。
大学生、軽いパーマの茶髪、すらっと高い背、優しい笑顔、そして…
─────桜。
名前だって知らない。
「また、会えたら」
会えるのかな?会えるよね?
会いたい、あなたに。
知りたい、あなたを。