咲いても、枯れても1~サクラ色~




『……いよ』



『へ?』




『すぐに戻って来いよ』





バカね。



貴方は何の心配をしているの?


少なくとも、出逢った時にはこんな人だとは思わなかった。




恋愛とか、女の人に、こんなに真剣で、貪欲な人だとは。



そんな拓が大好き、と思う私は何なのかしら?





『バカね。私は必ず、あなたの元へ戻って来るわよ』



『なら、いい』




拓は素っ気なくそう言ってから、再び机に向かった。



その時に一瞬だけ見えた顔は、とても真っ赤だった。




貴方らしくない。



いいや。




私の前では、普段からこんな拓が“貴方らしい”のよね。




『じゃあ、行って来ます』




ベッドに私の体温と、日の温かさを残して、立ち上がった。




< 196 / 279 >

この作品をシェア

pagetop