咲いても、枯れても1~サクラ色~
『もうそんな時間か…。俺はさくらの家に行く』
『なぜですか?』
『こっちに住むためには、荷物が必要だろう?それに…もう学校も休ませたくないしな』
ニヤリと私を見る。
はい。もう休みませんよ…。
『そうですか。では、お気をつけて』
相変わらず秀くんは、拓に対しては悩殺の可愛い笑顔。
銀の鋭さを感じない。
微塵も。
私なんて視覚にも入れず、拓への愛を残して、廊下を歩いて行った。
『しゅ、秀くん…!!』
『何』
冷たい声。
さっきは、少し仲良く成れた気がしたのにな。
それでもわざわざ振り返ってくれるだけで、嬉しい。
『な、なんでもないわ…っ』
私が慌てて告げると、秀くんはまた廊下を歩いて行った。
あっそ、と呟いて。
『どうした、さくら?』
拓も不思議そうに尋ねるけれど、確かには答えない。
やはり、なんでもないわ、と。