咲いても、枯れても1~サクラ色~
『拓様、白純美様、御車の準備が整いました』
玄関の側に居たメイドさんの一人が、頭を下げて言った。
『そうか、ありがとう』
拓がそのメイドさんに向かって柔らかい笑顔を見せる。
いえ、と呟いたけれど、その顔はとても嬉しそうだった。
拓はこれが普通なのだろうけれど、私はモヤモヤした。
なんて心が狭いのかしら。
胸に巣食うのは、不安ではなく嫉妬。
その笑顔は、誰にもあげたくないとか、一瞬で思う。
ああ、私は貪欲。
こんなにも拓が好きだなんて。
今よりももっと、拓を欲深く求めるだなんて。