咲いても、枯れても1~サクラ色~




互いに食い入るように見つめ合う。




身体が、近づいて行く。





すると拓が、空いてる右手で私の頬を優しく撫でる。




突然、ドキドキする。





無性に。







『さくら、俺のことだけを考えて』




思わず、瞳を揺らす。





これが拓の本音なの?、と思って。





聞き取れないほど小さな声で、囁くように言う。




けれどきっとそれは、頼稜さんに聞かれたくないゆえ。







その甘い雰囲気に、タイミングの悪い言葉。




『拓様、白純美様。御自宅に到着致しました』





満面の笑みで、私たちを見る頼稜さん。




弾かれたように、身体を引き離す私たち。






全く、頼稜さんはとんでもない意地悪だわ。



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