咲いても、枯れても1~サクラ色~



そのまま二人で座り込む。





すぐ傍にはサクラ色が散る。




儚く、優美に。





『さくら、この桜が何か分かるか?』




唐突に落とされた言葉に、首を傾げる。





うまく、思考が働かない。




胸元に抱き寄せてくれている拓の、甘い優しさに酔ってしまって。





……種類ってこと?



私はあんまり詳しくないわ。





『分からない』




拓は、やっぱり、と言うように満足そうに笑う。



そうして、ゆっくりと言葉を落とす。





『西条にはたくさんの桜があるのは知ってるよな?』



『うん。どれが何かは分からないけれど』





むせかえる程の、サクラ色。



西条には桜の森、くらいに桜がたくさんある。





その色は、淡い桃色だけではない。



真っ白や、もっと濃い桃色も、そうでもない色も。





一つとして、全く同じ色は無いと思う。




色も形も、咲く時期でさえ、少しずつ違う。




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