咲いても、枯れても1~サクラ色~
私に語りかける拓の顔は、生き生きとしている。
少し、自慢気に。
それを見て、柔らかく微笑む。
こういう拓も、好き。
そんな私にお構い無しに、拓は話を続ける。
『こういう長所を持ってたから染井吉野は明治くらいから、全国に植えられて普及したんだよ』
長所。
確かに拓の話を聞いてると、染井吉野にはたくさんの長所があるわ。
だからこそ、一番有名。
最早、特別な桜ではなく、馴染みきった桜。
けれどどこか、その桜に惹かれる。
『俺は、染井吉野が一番好きなんだ』
目の前にある染井吉野が、風に乗って拓の手元に散る。
淡い、桜。
その桜と拓が重なって見える。
どことなく、儚くて。
消えてしまわないように、拓の手をギュッと握る。
その手からは、確かに熱を感じる。