咲いても、枯れても1~サクラ色~



『西条?』

『うん、知ってるの?』


恵は「ううん」と首を振ってから、一度黙った。

しばらくして、口を開いた。



『西条って、大富豪?』

『し、知らないよ』


『なんかね、聞いたことあるの。西条、藤井、花園、この三家って有名なお金持ちらしいよ』



西条、藤井、花園。




私が知らなかっただけ?


まさか、お金持ち?大富豪?




『白純美は、大富豪だから西条さんを好きになったって訳じゃないんだよね?』


『あ、当たり前じゃない!!!
拓がお金持ちなんて、今知ったんだから』



西条、その名字だからって拓が大富豪とは限らない。




違う西条さん、かもしれないんだし。



とにかく、私は「大富豪」なんて地位はいらない。



むしろ、普通がいい。





手に届かないような人より、
普通の、普通の人がいい。



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