キミのヤキモチ
キミガスキダカラ
「それ…、どういうこと?」
自分の席に着くなり
遅刻ギリギリで教室に滑り込んできたユウは、冷たい風に打たれて赤くなった頬を手袋で抑えながら、オレの言葉に目を丸くした。
自転車小屋から急いで走ってきたのか、手にはまだ小さな鈴のついた鍵を握ったままで
ハァハァと息を切らしながら、何度もオレと詩織の間を視線でなぞっていく。
今に始まったことじゃないけど、オレはユウが見せるこのボケっとしたようなキョトンとしたような
人形みたいに固まって驚く仕草が大好きで。
「だからぁ、オレと詩織が付き合うことになったって言ってんの」
「なんで?」
「なんでってお前…、普通そういう恥ずかしいこと聞く?」
この日もちょっとからかうつもりで、オレは心にもない冗談を演技も含めた照れ笑いで話してみせたんだ。
ユウがオレのことを好きでいてくれてるっていうのもわかってたから、気持ち的にも余裕があったし
何よりオレも、ずっとユウが好きだったから。
「だって…、だって詩織ちゃんは…」
「あ、チャイムなったぞ」
「……」
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