ペアリングを外して




 手紙には、涙の跡のようなものが数箇所にあった。

 三村は一体どんな気持ちでこの手紙を書いたのだろう。



 バカ野郎。

 お前みたいな女、忘れられるわけがないだろう。

 お前だって忘れることなんかできないくせに。

 女のくせにカッコつけて、全部自分が悪いことにしなくていいんだよ。

 せめて罪くらい共有させてくれよ。

 素直におめでとうなんて思えるか。

 別の男との間に生まれた子供の顔なんて、見たくもない。



 だけど、もう手が届かないのなら。

 俺に望みが全くなくなったのなら。

 せめて、幸せになって欲しい。

 俺じゃここまでは無理だったって思えるくらい、思いっきり幸せになってくれ。


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