ペアリングを外して



 あの日、十年ぶりにお前と会わなければ、俺はこんなに悩むことも苦しむこともなかった。

 自然に敷かれたレールに従って、突き進むだけだった。



 三村、お前に魅せられて脱線したんだ。

 大事故だぞ。

 わかってるのか?

 俺は完全に、レールを失ってしまったんだから。



 負けたよ、「A」。

 完敗だ。

 笑えるよな。

 反則をしていたのは、俺のほうだというのに。

 こんなタイミングでプロポーズなんて、完全に想定外だった。

 お前は三村を悩ませる原因でしかないんだと、見くびっていた。

 やっぱり、正義は勝つようにできているみたいだ。



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