ペアリングを外して
「ねえ、幸雄」
「ん?」
「明日さ、土曜だし、久々にどこかに出かけない?」
頭の中が三村一色になっていた俺は、久美の声で現実に引き戻された。
あれからまだ一週間しか経っていないというのに、もう三村が恋しいと思い始めている。
十年前の恋は、取り戻してしまったはずなのに。
「ああ、そうだな。どこ行こうか?」
いかんいかん。
俺の彼女は久美であって、三村ではない。
久美のことをちゃんと考えなければ。
「箱根に温泉でも入りに行かない?」
「真夏に? 男女別じゃねーかよ」
「ふふ。一緒に入りたいの?」
「入りたい」
三村を振り切るように、笑う久美を抱きしめ甘える。
そしてすぐに起き上がって、ネットで日帰り温泉の検索を始めた。