ペアリングを外して
翌朝、久美と共に車で箱根へ出かける。
混み合う首都高速。
熟年カップル化している俺たちに、ほとんど会話はない。
お互いのことは知りすぎている。
身の上話だって、近況報告だって、もう十分すぎるほどにしすぎてしまった。
三村のことを知りたい。
今までの十年間、どうしてきたのか。
どんなことをして、どんな風に思って、どう行動したのか。
知らないことが多いのが、そして知りたいと思うことが、こんなにも自分を駆り立てるものだとは知らなかった。
箱根に到着したのは、午後になってからだった。
昼飯を食って、目的の温泉へ行く。
当然のことながら、男女は別になる。
「じゃ、上がったらメールちょうだいね」
「おう」
何も知らない久美は、笑顔で女湯へと消えていった。