ペアリングを外して
そもそもの始まりは、数時間前。
上京した地元仲間で集まった酒の席だった。
「つーかもう卒業して十年だな」
「早いよなぁ。しかも、みんな老けた」
「まだ二十五じゃないの。若い、若い」
集まったメンバーはみんな同じ中学出身だ。
劇的に変わった奴はおらず、それぞれ当時の面影を残して大人へと成長しているようだった。
メンバーの一人が問う。
「つーか湯本。あと一人来るって言ってなかった?」
「うん。仕事が押しちゃって、もうすぐ来るって」
湯本はこの会の発起人だ。
中学の頃から人付き合いのいい活発な女子だった。
「あ、まだ誰か来るんだ。誰が来るの?」
という俺の問いに、湯本は意味深に微笑んだ。
その時、彼女の携帯が鳴り出す。
「あ、来たみたい。迎えに行ってくるね」
答えはくれぬまま、彼女は席を立った。