ペアリングを外して
期待をよそに、起きても三村からのメールはなかった。
人の女に、何を期待してんだよ。
自分に言い聞かせるが、やっぱり寂しかったりする。
「じゃ、また連絡するねー」
「おう、じゃあな」
電車の乗り換えで久美と別れた後は、携帯を握りっぱなし。
しかし、会社に着いても連絡はなかった。
諦めて軽くヘコんでいた昼休み。
同僚と飯を食って、会社に戻っている時のこと。
ジャケットのポケットが震えだした。
社用ではなく、私用の携帯だ。
ディスプレイには、「三村菜月」の文字。
一気に鼓動が早まった俺は同僚へ先に帰るように伝え、急いで電話に出た。
「もしもし」
「あ、小出? あたし」
「うん。どうした?」
我ながら白々しい。
聞きたい言葉は、決まっているのに。