ペアリングを外して
「あのね、記憶違いだったら申し訳ないんだけど……」
「うん」
「今日って小出の誕生日だよね?」
「……うん!」
顔が緩む。
胸が弾む。
「おめでとう。って、それだけなの」
それだけで十分です、姉御。
「ありがとう。覚えててくれたんだ」
「うん。十年前の記憶だから、間違ってたらどうしようって思ってたの」
十年前から知っていたのか。
何とも言えない嬉しさと照れくささで、今の緩みまくった顔なんて会社の人間には見せられないと思った。
「合ってるよ。メールでも良かったのに」
「うん、迷ったんだけど……声、聞きたかったから」
俺だって聞きたかった。
愛されている気がして、完全に舞い上がっている。
「あのさ、俺……声だけじゃ足りない」
「え?」
「顔を見たい。っていうより、触りたい」