ペアリングを外して
#5
俺は温厚な久美を侮っていた。
三村に会った次の日のこと。
この日は俺が久美の部屋に来ていた。
「最近素っ気なくなったよね」
この言葉に脳みそが揺れたような気がした。
一瞬顔が引きつったのが自分でもわかる。
「そうか?」
久美には毎日電話やらメールなどをしている。
三村とのことは、お互いバレないように緻密に行動していたつもりだ。
スーツに髪の毛一本残したこともない。
さては女のカンというやつだろうか。
久美は不満げな顔をしながら言う。
「だって、なんか……あたしといても、心ここにあらずって感じなんだもん」
俺の心は俺の胸の中にあるはずなのだが。
久美といる時に三村のことを考えてしまうことは否定できない。
「それにね、夏ごろからかな。メールの返信に時間がかかるようになったし」